見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
加えて、生まれついての、ではないとはいえ彼はお坊ちゃんだ。暮らしも接してきた人たちも、さぞかしハイクラスだったろう。そんな人が私みたいな、中小企業レベルの社長の娘と付き合って、幻滅しやしないだろうか。
……ちょっと待って、私、稔くんと結婚する前提で話を考えてる?
いやもちろん、今日は見合いに来ているんだから、それで普通なのかもだけど!
「え、えっと」
「はるちゃんは、俺と結婚すんの、気が進まん?」
「え、ええーーーと」
小首をかしげて問われて、困惑する。その仕草がイケメンなのに可愛いなあと思ってしまったのと、私に向けられた稔くんの目の、意外なほどの真摯さに。
……正直に言えば、気が進まない、わけではない。
引っ越しで別れ別れになるまで、彼とは親しくしていた。女子の友達はもちろんいたけれど、何か相談する時、クラスの係を引き受ける時には、よく一緒になったものだ。
小学生とはいえ、高学年にもなれば男子と女子、それぞれに分かれて付き合いが固まっていくものだろうけど、私と稔くんは、お互いに「特別な相手」であったと思う。もう少し付き合いが続いていればほぼ間違いなく初恋の関係になっただろう。
──あるいは、私だけに限って言えば、無意識のうちに初恋をしていたかもしれない。