見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
母親同士の縁から父親同士が連絡を取り合い、社交辞令が交わされた後、どうせならお仕事を一緒にしませんか、という話があちら側から出たらしい。
『クロケット』グループは、持ち帰り用のレトルト商品開発を独自におこなっている。店内で販売しているそれら、カレーやスープなどの商品はそこそこ人気があった。その商品をもっと売るため、フェアルート商事の販売ルートに乗せていきましょうといった話だそうだ。
聞いてみると、市場調査の一環として、あちらのお父さんは時々ファミレス巡りをしているとのこと。その中で『クロケット』にも来ていて、売っている商品にも注目してくださっていたらしい。
うちの父親に否やはなく、そこから見合い話と提携話がとんとん拍子に進んだという。
単純に私の婚期を気にしての見合いかと思っていたが、そうではなかったのか。
まあ、あのフェアルートと業務提携できるとなったらそりゃ、私の拒絶なんか跳ね飛ばして張り切るよね……そうでなくとも、大手商社の社長の息子という条件はそうそう無いわけだし。
結果的には、私にとってもたぶん良かった。
このまま結婚せず30代を迎えて時を過ごしていったら、絶対に両親はいい顔をしないだろうし。
それに稔くんは、仕事を続けていって全然かまわないと言ってくれている。女性も自立の手段は持っておく方が良いと。その考え方は私にとっては有難かった。
バリキャリになろうとまでは思わないしそういう職種でもないけど、人生、何が起きるかわからない。このご時世、仕事のキャリアを途切れさせずに済むならそれに越したことはない。