見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
「そやね。二人ともほんま、末永くお幸せに」
「お幸せにね!」
関西弁での驚きと喜びとお祝いの集中砲火を浴びさせられ、私は疲れを表に出さないよう、懸命の努力で笑顔を顔に貼りつける。
対して稔くんはというと、1時間の挙式、2時間半の披露宴の後でも、まったく疲れた様子がない。朝の準備前と同じ、すっきりした表情を浮かべている。
ありがとう、と昔の知り合いや友達に言いながら微笑んでいる姿には、ほとんどの女性客がほんのりと頬を染めて見入っていた。
そうだよね、芸能人に負けず劣らずのイケメンがこんな爽やかな表情を見せていたら、普通の女性の反応はそうなるよね……と頭では理解しつつも。
心の中は複雑だった。
女性の大半にそんな反応をされる男性が今は自分の夫、という優越感と。
結婚しても彼がそんなふうに女性を惹きつけている事実に対する、焦りのような気持ち。
優越感を覚えるのは、私も人並みの女である証拠だけど。
焦りを感じてしまうのが何故なのかは、いまいちわからない。
この結婚はあくまでも、親から今後に口出しされないための契約。
それは充分にわかっているし、忘れるつもりもない。だがそれでも、稔くんを見つめる女性のうっとりとした目に対して、落ち着かない思いを感じるのは抑えられなかった。