見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
……嫉妬、まではいかないけど、ヤキモチ、には近い。
そんなふうに気づいて、内心うろたえる。
彼に好意を感じているのは否定しない。けれど、その感情がこんなふうに、独占欲に結び付くなんて。
子供みたいな反応に恥ずかしくなって、顔に血が上る。
小学校時代の友達が去って行き、しばし周囲が静かになる。
ブーケの陰でこっそり息をつくと、耳ざとく聞きつけたらしい稔くんが振り向いた。
「はるちゃん、疲れた?」
「……ん、まあ、ちょっと」
控えめに言ったが、花嫁の常として披露宴で出された料理はほとんど食べられなかったし、記念撮影もしまくった。空腹と笑顔の作りすぎ、加えて着慣れないドレスの重さで、今は立っているのがやっとなくらいクタクタだ。
「もうほとんど客おらんし、先に部屋行っとき。後はなんとかするから」
「え……でも」
ええから、と言いかけた稔くんの背後から、誰かが彼の肩をがしっと掴んだ。
わちゃわちゃと騒がしくなってすぐにはわからなかったが、どうやら稔くんの、学生時代の友達か会社の同僚らしい。気安い様子と断続的に聞こえる会話からそう判断した。
彼らが、稔くんを半ば引きずるようにどこかへ連れていくのを見送りつつ、私は残る招待客の見送りを済ませた。