見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
2時間後。
私はホテルの最上階の部屋で、ベッドに腰を下ろしていた。
「……はあ」
ひとりで、ネグリジェ姿でこんな場所に座っていると、すごく変な気分である。
まるで、王様の夜の訪れを待っている、新しい愛妾のような……
って、それはさすがに漫画や小説の読みすぎか。ハーレクイン系のロマンスストーリーが好きなせいで、妙な想像をしてしまった。
けれど緊張の度合いでは、似ているかもしれない。
私は男性との経験が少ない。キス以上のことをしたのは一人だけ、大学時代から26歳前まで付き合っていた元彼のみ。
それから今、29歳までの数年間。仕事はそれなりに忙しかったけど、声をかけられたことが皆無なわけではない。でもどの人にもあまり惹かれるものを感じなくて、付き合ってはみても特別な関係には至らなかった。
そんな私の事情を知っている友達や、やたら張り切っている母によって、今晩の準備というか様々な物が支給されたのだった。今着ている襟ぐりの広いレース調のネグリジェは母から、薔薇の香りのバスソルトと保湿クリームは高校の親友から、という具合に。
演出は大事だよ、と親友などは、電話越しにもこぶしを握っているのがわかるような気合い入れの電話を、さっきも確認がてらにかけてきたぐらいだ。
……そういうものなんだろうか。