見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 まあ、時間をかけてしっかり手入れできたおかげで、いつもよりピカピカにはなったように思うけど。
 ……けれど、この結婚って契約だからな……あっちにその気がない可能性もなきにしもあらずでは……特に今日は、たぶん飲みに連れていかれたのだろうから、さらに疲れているだろうし……

 なんてことをつらつらと考えていたら、突然部屋の外が騒がしくなった。
 笑い声と叫び声がひとしきり上がって、それが遠ざかっていった後。

 部屋の扉がノックされた。
 覗き穴で相手を確認してから開ける。

 稔くんが赤い顔で、ぐったりした様子で入ってきた。ふらふらとベッドに近づき、勢いよく腰を下ろすと、そのまま後ろに体を倒す。

「……だ、大丈夫?」
「ん……」

 予想以上に疲れた様子が心配になって、彼の隣に座る。
 格好を気にせず顔を近づけると、やっぱりお酒の匂いが強い。

「だいぶ飲まされた?」
「……ん、カクテル3杯までは覚えてるけど……その先が」

 目を覆っていた手が外されて、稔くんの目が私をとらえた。

「ごめんな、待たせて」
「え。う、ううん。別に。こういう日だし、友達と飲むの楽しいだろうなって」

 今の自分の格好とかを思い出して、恥ずかしさ込みで首を振ると、稔くんも寝転がったままかぶりを振った。

「まあ確かに、盛り上がってたけど──俺は早くこっちに来たかった」
「えっ?」
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