見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 唐突に起き上がった稔くんの目が、今度はまっすぐに私を見つめる。
 数え忘れるほどカクテルを飲んだというわりには、うつろでも頼りなくもない、強い視線。

「はるちゃんを待たせとると思ったら、気が気じゃなかった」
「え、あの、稔くん?」

 ぐっと距離を縮められ、そのまま抱きしめられる。
 思いがけない力の強さにうろたえ、反射的に身を引こうとするも、彼の腕はぴくりとも動かない。

「……疲れてる?」
「ま、まあそれなりには」
「嫌かな」

 尋ねられ、どう返答していいかわからないうちに、唇が重ねられた。
 全体を押し付けるように触れた後、一度離れる。けれどすぐにまた触れてきて、今度は私の唇に吸い付いてくる。

 ちろりと、舌先が上唇を舐めた。
 思わず開けた隙間から、厚い舌が入り込んできた。歯列を、歯茎をゆっくりとなぞった後、私の舌に触れて絡めてくる。

 久しぶりの深いキスは、記憶にあるよりもどういうわけか、私の頭を強くしびれさせていく。
 ディープキスって、こんなに気持ちよかったっけ……?

 昔付き合った人とも、何度もこんなふうにキスはしたけれど、あまり気持ちいいという覚えはなかった。唾液の味とか、相手の口臭が鼻についたりとか、そんな記憶の方が強い。
 対して稔くんとのキスは、お酒の味が間違いなく混じっているのに、それに酔わされるような錯覚を覚えるほどに、心地よかった。くちゅくちゅという水音が耳を刺激して、心地良さがいや増す。

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