見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
「シャワー使っていい?」
「ど、どうぞ」
それ以上聞かずに、私は洗面所を飛び出した。
後ろでバスルームの扉が閉まる音がする。
はーっと、部屋に戻って大きく息を吐いた。
式の翌日からこんな調子で、やっていけるのだろうか?
……まずい、まだ化粧していない。
化粧品は洗面所に置いてきてしまった。けれどまた、裸の彼と顔を合わせたら気まずい。
仕方なく、彼が出てくるまで待つことにする。それまで、身の回りを整えておくことにした。荷物の整理とか……ベッドメイキングとか。どうせ係の人が入ってシーツも換えるのだろうけど、乱れたままにしておくのはなんとなく恥ずかしい。
10分ほどして出てきた稔くんは、シャツと下着を身に着けていた。ほっとする。
入れ違いに洗面所に行き、手早く化粧を済ませる。
そうしてまた部屋に戻った時、稔くんはスーツのジャケットに袖を通していた。
……え、今日、日曜なのに?
「どこ行くの?」
「会社。片付いてない仕事、あるから」
「日曜なのに?」
「明日には客のとこ持ってかないとダメなやつだから。一日かかると思う」
「そ、そう……」
「俺の荷物は自分で持ってくから。悪いけど先に帰ってて。夕飯はいらないから」
「わかった……」
呆然と応じているうちに、自分のスーツケースを転がして、稔くんは部屋を出ていった。