見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 ひとり、部屋に残された私は、ますます呆然の度合いを深める。

 ……そんなもん、なの?
 新婚1日目の朝で、百歩譲って仕事に行くのは仕方ないとしても、あんな淡々としたやり取りになっちゃうもの?

 昨夜の出来事が、凄くリアルな夢だったような気さえしてくる。
 思わずブラウスの合わせ目から胸元を覗くが、残された痕は消えていない。

 夢じゃなかった。

 ──ああそうか、「契約」だから。

 あの「初夜」も契約のうちか。

 なんだか、気が抜けてしまった。
 のろのろと片付けの続きをして、部屋を見回す。
 どこを見ても視界に引っかかるベッド。

 ……あれきり、ってことなのかな。
 これからは、それぞれが自由に過ごす。
 必要最低限以外の干渉はしない。

 はっきり、そんなふうに言い交わしたわけではないけれど。

 昨夜までの半年間、いくらでも機会は作れたはずなのに、彼が一度も私に手を触れなかったことを思えば。
 おそらくは、それで平気なんだろう。
 もしかしたら他で発散しているのかもしれない。

 ……などと考えたら、勝手に胸が痛んだけれど。

 私たちの結婚は、あくまでも契約。
 実状が仮面夫婦になろうと、文句を言う筋合いではないのだ。
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