見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

「ねえねえ、ちょっといい?」

 言葉は疑問形だけど、有無を言わせない力で、永瀬さんは私を給湯スペースに引きずりこむ。

「……おはようございます。何ですか」
「何って、決まってるじゃない。新婚最初の週末よ! どうだった?」

 できるだけ冷静に、と内心で唱えつつ発した私の質問に、永瀬さんは背景に花か星をぶちまけんほどの勢いで答えた。

「どうって……特には。普通の日曜でしたよ」
「そんなはずないでしょ! 大恋愛の末に結婚した二人が、のんきにだらだらして休みを過ごすわけないじゃない。きっとラブラブな一日だったんでしょ、ねえ」

 目を、少女漫画のごとくキラキラさせて、永瀬さんは迫ってくる。
 大恋愛、なんて広まっているのか。恥ずかしいことこの上ない。

 いったい、何を聞かせろというのだろう。
 ……ああそうか、相手が取引先の、義理とはいえ御曹司だと言うのは知られているから。たぶん、多かれ少なかれ、羨まれているのだ。
 だから新婚をネタにからかって、恥じらうのを見て楽しみたいのかもしれない。

 少し思案して、私はわざと、恥ずかしそうでありつつも明るい声で応じた。

「……そうですねえ、まあ、新婚ですから? 一日中もちろん仲良く過ごしましたよ。楽しかったです~」

 不自然なくらいに幸せそうに、満面の笑みを浮かべて言ってみると、永瀬さんは逆に、憮然とした表情になった。
 ストレートに「仲良く過ごした」なんて言ったものだから、きっと出鼻をくじかれたような気分になっているのだろう。
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