見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
新居は、近隣では有名な、いわゆる高級住宅街。
その中にある、築年数の浅いレジデンスの一室が、私たちの住む部屋だ。
当然ながら分譲で、3LDKとしてはとんでもない金額が付いていた。もっとも「とんでもない」と思ったのは私の側だけみたいで、稔くんも頭金を出してくださった彼のご両親も、このクラスの部屋ならこんなもの、妥当な値段だと思っているのが会話の端々から伝わってきた。
金銭感覚の違いを、まざまざと見せつけられた気がした。
稔くんとお母さんは、再婚するまではむしろ、切り詰めたとまでは言わずとも節約を心がけた生活をしていただろうと思う。けれど十五年以上、お金に困らないどころか余っているような生活をすると、基準がすっかり変わってしまうんだろうか……たぶんそうなんだろうな、と思わざるを得ない。
きっと、生活必需品も一般より高価な状況に慣れてしまって、庶民感覚が麻痺しちゃうんだろうな。
それは稔くんやお母さんのせいではない。そういう生活が普通になったのはあくまでも副産物だし、人間は良くも悪くも、置かれた環境に慣れるようにできているものだから。