見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
「これ着替えて、寝とって。あ、その前に薬」
キッチンに行った時、パントリーに置いてある救急箱から、もしやと思って風邪薬を出してきた。
のろのろとした動きで、封を開けた粉薬と、水を一緒に飲み下す稔くんの様子を見守る。
「はい、飲んだらおとなしく寝てな。なんか食べたいもんはある?」
「……いや、今はいい」
「わかった」
「……悪いな、ごめん」
「何が悪いの。反省するんやったら、もうちょっと仕事はセーブした方がええよ、ほんま」
「…………」
半ば本気で怒った私に、稔くんは答えなかった。
焦点の合わない目で遠くを見ている。
ため息をついて、私は彼に言い置く。
「ほな、向こう行ってるから。欲しいもんとか用事とかあったら、携帯で呼んで」
ん、と稔くんがうなずくのを確認して、寝室を出る。
ふう、ともう一度、深く息を吐き出した。
……なんかちょっと、緊張した。
彼とこれだけ話すのも、体を密着させるのも、かなり久しぶりだったのだ。
勢いでいろいろ言ったり、したりしちゃったけど、思い返すと、心臓がドキドキしてくる。
あ、そうだ……同窓会のこと、言いそびれたな。
まあ、今すぐ言わなきゃいけない件でもないし、今の状態の稔くんにこれ以上の会話は憚られる。
また折を見て伝えよう。そう思って、しばらく同窓会のことについては頭の隅に追いやった。