見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!


 はっ、とそのことを思い出したのは、同窓会当日の1週間前だった。
 今日にも手配した外出用ドレスが届く、という日になって。

 暦は9月上旬。衣替えの時期が近づいたことで学校や企業の制服業者からの発注が増え、私の会社もこのところ忙しかった。その忙しさに取りまぎれて、なおかつ体調の戻った稔くんはまた連日帰宅が遅かったこともあって、すっかり彼に伝えるのを忘れてしまっていた。

 今日は土曜日。私の仕事は休みで、特に出かける予定もない。対して稔くんは、今日も朝から会社に行っている。
 私は、一人には広すぎるレジデンスの部屋をくまなく掃除しつつ、宅配でドレスが届くのを待っていた。

 昼近くになり、そろそろごはんを用意しようかな、と考えた時。
 ガチャリと、玄関ドアの開く音がした。
 驚いて出ていくと、カバンと何か買ってきたらしい袋を持った稔くんが、靴を脱いでいるところだった。

「あ、ただいま」
「──おかえり。仕事終わったの?」
「ん、今日はもうすることが全然ないから……久しぶりに、はるちゃんと一緒にメシでも食おうかな、とか思って」

 どっか食いに行かない? とかなり久々に微笑みを見せられて、彼の顔立ちが整っていることを今さらながらに認識した私は、しばらく見とれてしまった。
 気まぐれでもそんなことを言われて、思わず嬉しい気持ちが込み上げてきたが、今は出かけない方がいいのだと思い出す。
< 58 / 120 >

この作品をシェア

pagetop