見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

「あっ……」

 そのついでに、というか連想で思い出した。稔くんに、来週の同窓会についてまったく話していないことに。
 私の反応を、稔くんは見逃さなかったらしい。怪訝な顔で「どうかした?」と尋ねてくる。

「あ、えと、その」

 知らせが届いてから1ヶ月以上も言わなかったことが、今さらながら気まずい。顔を合わせる時間は非常に限られていたとはいえ、伝えようと思えば30秒で伝えられることだ。あるいはメッセージアプリなどでも。

 それをしなかったのは、単純に思いつかなかったのも理由だけど、どうせ彼は私に興味がないのだろうからと、ある意味でわざと、伝えるのを後回しにしていたせいでもある。
 純粋に忘れていただけではないから、後ろめたい。
 しかし、当日まで伝えずに、いきなり出かけるわけにもいかない。

「……あ、のね。実は」

 意を決して話そうとした瞬間、インターホンが鳴った。
 1階のエントランスで鳴らされた時の音だ、と思ってびくりとする。確実に宅配の業者だと思ったから。

 すでに部屋に上がっていた稔くんが、当然ながら、動こうとしない私を奇妙な目で見ながら横を通り過ぎて、リビングダイニングにあるインターホンの通話パネルを操作する。

「はい、何でしょう」
「お荷物をお持ちしました。よろしいでしょうか」
< 59 / 120 >

この作品をシェア

pagetop