見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 あんな視線を向けられたのは久しぶりだった。
 ただ見ているだけではない、私に対する何らかの興味、もしくは熱がこもった視線。

 どうして坂根さんは、あんなふうに私を見つめていたんだろう。
 今日が初対面なのに──いや、本当にそうだろうか?

 ちょっと、見覚えがあるような気がしなくもない……面差しに、何かの記憶が引っ掛かるような、少し落ち着かない気分を感じる、かもしれない。

 最近会ったことはない……はずだ。
 営業1課に来てからの4年、よくお茶出しはしているけど、坂根さんに会ったことはない。あんなイケメンだったら絶対に覚えているはず。

 ううん、と文字通り首を捻っていると、ディスプレイのスピーカーから通知音が鳴った。さっき入力した注文の、納期回答の知らせだ。
 日にちが先方の希望に沿っているかを確認して、遅いようなら調整してもらわなくちゃいけない。
 ディスプレイとにらめっこしながら担当の営業さんと連絡を取り、納期の確認と調整を進めていく。

 そうやって仕事を続けているうちに、先ほど気にかかったことは、頭の隅に追いやられていた。
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