見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 やっぱり、そうか。推測と懸念が当たって、内心焦る。

 機会は多くなかったと思うけど、うちの親も仕事の付き合い上、個人や企業のパーティーに呼ばれることがあった。そういう時、既婚者は夫婦同伴が当たり前、というのが昔からの風潮だ。だからよほどの事情(片方が病気など)がない限り、両親も連れだって参加していた。
 つまり、今度の集まりには、稔くんと私とで参加しなければならない。

 ……あの夜からこちら、今朝のように食事を取る機会と会話の時間は、それ以前とは比べものにならないほど増えた。時には彼が、前のように仕事が詰まっていると言って早出したり帰りが遅かったりするけど、朝か夜のどちらかは一緒にごはんを食べるし、休日はほぼ毎週、二日休んでいる。
 そして二日のうち、どちらか一日は必ず、夜は外へ食べに出かける。それも、私がこれまで足を踏み入れたことのないような、ハイクラスのお店に。

 そういう高級店に、行ったことがないわけじゃない。けれど慣れると言えるほどに通うような家庭環境でもプライベートでもなかったから、行くたびに緊張してしまう。
 マナーはかろうじて知っているけど、毎回周りの視線が気になってしまう。稔くんのマナーが実に自然、かつ優雅に見えるからなおさらだ。

 さすが、大企業の経営者一族で育っただけのことはある。けれど生まれついての身の上ではないから、考えてみると、それなりの苦労もあったに違いない。
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