見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

「はるちゃん、やっぱり不安?」
「……ん、まあ……ちょっとは」
「そうだよな──うちの親戚、遠慮の無い所があるから。当日は俺がなるべく一緒にいるようにするよ」
「気にしないでいいわよ。だってその日の主役でしょう」
「俺が主役ならはるちゃんだって主役だよ。奥さんなんだから」

 奥さん、と稔くんの口から言われると、どうにも面映ゆい。でも本当は違うし、なんて憎まれ口が飛び出しそうになるのを、かろうじて抑えた。

 ──こんなふうに穏やかな時間を過ごしていても、毎晩のように夜をともにしていても。
 私たちは契約結婚の間柄なのだ。

「そうね、不安はあるけど、出席する。私の役目だもの」
「ありがとう。じゃあさっそくなんだけど、今日、ドレス選びに行かないか」
「ドレス?」

 おうむ返しに聞いてしまったけど、確かにその通りだ。集まりに出るのなら相応の服が必要──前に買ったのはダメになってしまったし。
 連鎖的にその発端から顛末まで、あれこれ思い出してしまって複雑な気持ちになる。向かいを窺うと、稔くんも同じなのか、あさっての方向に視線をやって頭を掻いている。

「……その、ちょっといろいろあったし、今度の服はプレゼントするから」

 そんなことを、やや小声で照れたように言われてしまい、私は毒気を抜かれるのだった。
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