見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
その日の午後、稔くんの運転する車で、私はドレスショップに連れて行かれた。
先日私が行った店よりも格上のブランドばかりが並ぶ所で、値段も文字通り桁違い。その事実に気づいておののく私に、稔くんは「好きなの選んで」と気負いも何もない、いたって普通の調子で促す。
今さらながら、自分と彼の、金銭感覚の違いにあっけに取られてしまう。稔くんの家の人たちにとっては、このレベルできっと「普通」なんだろう。
軒並み六桁の値札が付く商品に気圧されながらも、どうにかこうにか派手すぎず、かつ地味すぎないドレスを選び出す。そこから靴やバッグ、アクセサリーのコーディネートを店員さんのお薦めで決められ、後日配送の手続きが終わって店を出た頃には、もう日が沈みかけていた。
「遅くなっちゃったな。なんか食べて帰ろうか」
「い、いい。帰ってから作るから」
ドレス選びで疲れていたし、これから夕食の用意をするのは本音を言うと楽じゃない。けれど稔くんが選ぶならきっとまた高級レストランの類だろうから、そういう店で食事をする方が気疲れしてしまう。