見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
おまけに参加者は皆、老若男女問わず大変きらびやかに見える。地味すぎないコーディネートを選んだつもりの自分の姿が、とてつもなく霞んで感じられてしまう。
それはもしかしたら、場慣れの程度のせいでもあるかもしれない。だって少し離れた所で遠縁だというフェアルート商事の関連会社の幹部たちと談笑している稔くんは、一見いつもとさほど変わらないネイビーのスーツ姿なのに(もちろん値段の桁は違うけど)、スポットライトを浴びているかのように輝いた雰囲気だし、実に堂々としている。お母さんが再婚してからの10数年で、彼はこの家に似合うだけの人物に変化したのだ。
もっとも、これだけ親族に馴染めるようになるには、人知れぬ努力も重ねてきたに違いない。生まれながらの跡継ぎではない稔くんへの反発や妬みが周囲になかったはずはないし、それは小さいものでもなかっただろう。苦労や我慢だってたくさん強いられてきたはずだ。
彼の努力を想像するにつけ、大変な積み重ねを10数年の中でしてきたことが偲ばれる。それを思えば、結婚して1年も経たない私が、この家の一員として認められなくても当然なのだろう、という気がする。