見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 私はまだまだ、跡継ぎの妻として未熟すぎるのだ。
 その事実を自覚しているかしていないかでは雲泥の差があるはず。自覚があれば、相応しくなるための努力をすることができる。ほんの少しずつであろうと、目標とする姿に近づいていくことができるはずだ。

 そんなふうに前向きに考えて、ネガティブになりそうな思考や事柄とは距離を置く、もしくはやり過ごそうと思う……のはあくまでも理想論。

「お久しぶり、明花さん。お一人なの?」
「お久しぶりです、叔母様。ええ、主人は今、あちらで中嶌工業の社長さんとご一緒で」
「まあそうなの。稔幸さんお忙しいものねえ」
「はい、そのようです。有難いことに」
「ええ、ええ、そうでしょうとも。優秀でいらっしゃるものね。出自に関係なく」

 ──こんなふうに、遠回しにでも嫌味を散りばめられた会話をするのは、実際問題としてどうしても疲れる。

 この叔母さんは、稔くんのお義父さんの妹で、悪い意味で生まれながらのお嬢様という感じだ。つまり、生まれの良さを鼻にかけて、そうでない相手を蔑むタイプの人。
 一族の見本であるべき兄が、連れ子のいる女性を妻に迎えたのが気に入らなかったらしく、義姉である人はもちろんのこと、その子供である稔くんのことも本心からは認めていないと聞く。
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