見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 うち、つまり相崎の親戚はほとんど皆、裏表の少ない性質の人たちだから、季節ごとや冠婚葬祭で集まった時には和気あいあいとしていた。それを思うと、ここの集まりで感じる疲労は段違いである。
 立場上というか、そういう環境に足を踏み入れてしまったのだから、仕方ないことではあるけれど。

 さっきまで話していた遠縁の人が去り、ふうと息を吐いたのも束の間、すすっと近寄ってくる気配を感じた。

「こんにちは、明花さん」
「……こんにちは」

 にこやかに挨拶してきたのは、稔くんのはとこの一人。確か、お祖父さん同士が兄弟だと聞いたような……

「結婚式以来ね、お久しぶり」
「そうですね。お久しぶりです、早紀子さん」
「あら、覚えててくれたの。嬉しい」
「主人に教えてもらいましたので」

 そう返した途端、無害そうな微笑みの中、目がすうっと細くなった。

「そうなの。それで、稔幸さんは?」

 あちらで、と何度も繰り返した回答をまた口にすると、早紀子さんの表情が変わる。笑ってはいるけど、直前までの愛想良いものとは違って、どこか意地悪そうな感じに。

「それでおひとりなのね。寂しいでしょ」
「忙しい人なのはわかってますから、特には」

 慣れたふうに返したら、鋭く睨まれた。
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