見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
稔くんがお義父さんの実子ではないということで、かつて持ち込まれていた縁談の中には、親戚の女性との話もあったらしい。そうすることで親族の結びつきがより強まると信じてる家もある、といつだったか稔くんが言っていた。
その時の表情から察するに、彼自身はそういった話にだいぶ辟易しているようだった。勧めてくる人がきっと、相当しつこかったのだろう。
具体的に聞いたことはないけど、もしかしたら、年齢の近い早紀子さんは縁談の話の当事者だったのかもしれない。そうでなかったとしても、稔くんは外見も実力も人並み以上だから、たいていの若い女性は少なからず憧れを持つだろう。
「そういえば、ご実家はレストラン経営だったかしら。さぞかしお忙しかったんでしょうね、ご両親も」
「ええ、まあ」
「庶民が一代で会社を興したのだもの、当然だわ」
「あら史江さん、そんな言い方は失礼よ。生まれついての良いお家ではないだけだもの」
横から話に割り込んできた女性も、はとこの一人だったはず。先々代はきょうだいが多かったとのことで、大叔父や大叔母が複数人健在だし、はとこに至っては二桁もいる。人の顔と名前を覚えるのは仕事柄慣れているとはいえ、親族全員を記憶するのはさすがにちょっと大変だった。
血縁だけあってと言うべきか、早紀子さんと史江さんは似ている。可愛らしく整った顔も、上品さにくるんだつもりでいるに違いない、高慢な雰囲気も。思えば先ほどの叔母さんも、相応に歳を重ねてはいるけど、若い頃はもてはやされただろうと想像できる顔立ちだった。