見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
「そんなお宅の人が、坂根本家の嫁になるなんて……ねえ」
「もちろん一昔前じゃ考えられなかったわ。でも今は、時代が違うということでしょうね」
二人だけで会話しながらも、目はちらちらと、物言いたげに繰り返し私に向けてくる。タイミングを見て移動しようか、と思った瞬間、目だけでなく口も向けられた。
「ねえ、明花さんはどう思ってるのかしら。ご自分の結婚について」
そう問うてきたのは史江さん。早紀子さんとともに、目を輝かせながら私を見ている。待ち望んでいた獲物を見るみたいな目だな、と感じた。
「責任ある立場を頂いたと思ってます。どんな時でも、夫を支えて盛り立てる、大事な役割を」
「そう、どんな時でも──ね」
史江さんがそう受けて、早紀子さんと目を合わせてくすくすと笑う。私の答えがとても面白いものだったように。
「そんな大変な役目、分不相応ではない?」
「……どういう意味でしょう」
「はっきり言わないとわからないかしら。可哀想だけどあなたは、本家跡継ぎの妻にふさわしくないと思うのよ。家柄も器も」
ストレートに言われて、一瞬、呼吸が止まる心地がした。
私がとっさに言葉を返せないでいる様子に、彼女たちは気を良くしたらしい。早紀子さんの発言に続けて、史江さんがこう言ってきた。
「そうね、だって明花さんは、私たちとは別の世界でお育ちなんですもの。いくら今はご実家が裕福だとしても、庶民の感覚しか持ってないなら、私たちと同じように振る舞えるとは思えないわ」