見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
もはや遠回しに言うことも、うわべを上品そうに取り繕うこともなく、二人は完全に私を見下した目つきで、嘲りの笑みを浮かべている。
──わかってる、そんなこと、言われなくても。
「あなたも本当はそう思ってるんでしょう? それなら今からでも役目を降りればいいのよ。もともと、稔幸さんとの話があったのは早紀子なのだから、譲ってやってちょうだい」
ああ、やっぱりさっきの予想は当たっていたのか──そんなふうに思った時、勝利を確信したように笑っていた彼女たちの表情が、固まった。
直後、私の右隣に立った気配が、肩に手を置く。
「やあ、楽しそうだね」
彼の声はあくまで穏やかだ。でも私にはわかる──穏やかに、けれど確実に憤っている感情が。
「と、稔幸さん」
「なんだか聞き捨てならない話が耳に入ったけど、俺の聞き違いかな? 分不相応だとか、譲ってやってとか」
早紀子さんと史江さんの顔が、揃って青ざめる。反論しようとしてか口を動かすけれど、何の言葉も紡げない様子だった。