見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
「昇進したらしばらくはまた、絶対に忙しくなると思う。だからその前に、どこかに旅行に行かないか」
「…………えっ?」
「ほら、その。新婚旅行も行ってないだろ。抱えてた仕事はだいぶ区切りがついてるし、長期休暇取れるタイミングは今ぐらいだと思うんだ」
「で、でも──その」
契約結婚でしょ? 新婚旅行なんて、そんな無駄な出費。
私がそう口にしようとした瞬間、テーブルの上に置いていた左手を取られる。その手つきがひどく優しくて、どきりと心臓が跳ねた。
「ずっと、二人で旅行したいと思ってた。だから少しでも早く休みを取りたくて、仕事詰めてたんだ」
「……え、半年ぐらい土日もほとんど会社行ってたのって、そのせい?」
「ん、まあそれもあったけど──正直言うと、二人きりで家にいたら、我慢できなくなると思ったから」
さらに照れた表情でそう言われて、私は数秒ぽかんとした後、顔に火が点く心地になった。
「はるちゃんと一日中一緒にいたら、情けないけど、自分をセーブできる自信がなかった。それでわざと仕事を増やして避けてたりした。あの頃は不愉快な思いさせてたよな、ごめん」