クール天狗の溺愛♡事情
 その間に誰かがわたしの腕を掴んでいる煉先輩の手を外してくれた。

 その誰かはそのまま煉先輩をドンッと押してわたしから離してくれたみたい。


 誰だろう? と光がおさまったので目蓋を上げようとしたところに、子供の声が響いた。

「美沙都はお前の嫁になんかならないよ! 美沙都はずっとこの里にいるんだ!」

 声や口調からして、多分十歳くらいの男の子。

 でも、それくらいの男の子の知り合いなんていないし本当に誰だろうって思う。


 目を開けて見えたのは、わたしを守るように煉先輩との間に立つ若草色の甚平(じんべい)を着た男の子。

 真っ白な髪をした、わたしの胸くらいの背丈の子だった。


 やっぱり知らない子だ。

 でもこの子はわたしのことを知っているっぽいし……本当に誰?


 その疑問には煉先輩が答えを口にしてくれる。

「お前、さっきの木霊か!? 山の神が眠っていて霊力は少ないはずなのに、何で人型を取れるんだ!?」

 煉先輩はこの子が人の形を取れることに驚いていたけれど、わたしはこの子が木霊だということの方が驚いた。


 さっきの木霊ってことは、コタちゃん!?

 確かにフワフワ毛玉のコタちゃんは見当たらないし、この子の髪はまさにコタちゃんっぽいけど……。
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