クール天狗の溺愛♡事情
 わたしが山の神の娘だってことも、もっと前から気づいていたみたいだし……。

 もしかしてはじめから気づいてたのかな?


 ツキン、と小さく胸が痛む。

 だとしたらこの優しい微笑みも、わたしだからじゃなくて守る対象だから。
 大事な使命だから向けられているだけなのかも。

 そんな思いに苦しくなる。


 お母さんには自信を持てって言われたし、昨日はもう少し自信を持っていいのかもって思ったけれど……。

 でも、その自信を持ち続けるのは簡単じゃなかったみたい。

 だって、諦められなくても当たって砕けるのは怖いもん。


 自然とうつむくわたしの頭に、風雅先輩はポンと優しく手を乗せた。

「どうした? 怖いか?」

 大丈夫だとでも言うように頭を撫でる風雅先輩。
 わたしはその手にやっぱりキュンとしながら、「いいえ」と答える。


 好きだから、使命だけで守られるのは辛い。


 そう言えれば良いんだけれど、言えなくて別のことを口にした。

「いつも守ってもらって、申し訳ないなって……」

「何だ、そんなこと。気にする必要はないぞ?」

 頭を撫でていた手が、うつむいていたわたしの頬をスルッと撫でて離れる。

 顔を上げると、とても……とても甘ったるい笑顔があった。


「俺は守るべき相手が美紗都で嬉しいから」

「え……?」

 ドキン、と心臓が大きく跳ねる。

 それはつまり、わたしだから嬉しいってこと?
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