クール天狗の溺愛♡事情
 煉先輩は掴んでいるわたしの手を強く握る。

 わたしのために怒ってくれている様子に、ちょっと見なおした。


 でも、そんな中でもわたしは気持ち悪さに耐えるしか出来ない。

 嫉妬から来る明らかな敵意とは違う。

 そういう強い感情じゃない。


 でも、まとわりつくような嫌悪が流れ込んできて……。

 せめて《感情の球》を見ないようにと彼らから視線をそらした。


「この際何だっていいさ。お前はその子を嫁として連れて行きたい。俺達はその子に里にいてほしくない。ほら、利害の一致だろ?」

「だから今このまま里を出て行けってか?」

「そういうことだ。山の神が目覚めたらできなくなるだろうからな……」


 勝手なことばかり言う眼鏡男子たちに怒りが湧いてくる。

 でも、気持ち悪さに耐えるしか出来ないわたしは言い返すことも出来なかった。


 煉先輩はどうするつもりなんだろう。

 この人達の言う通りわたしをこのまま連れて行こうとするのかな?


 煉先輩の決断でわたしがどうするのかも決まる。


 チラリと見た彼の顔には、不敵な笑みがあった。

「……やなこった」

「は?」

「お前らの言いなりになるのはしゃくにさわる。それに、美紗都を馬鹿にするのも気に食わねぇしな」
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