クール天狗の溺愛♡事情
 わたしの様子に驚きつつも、煉先輩はすぐにそう決断する。

 でも、高校生たちはそう簡単に逃がしてはくれなかった。


「逃がすかよ!」

 そうしてリーダーっぽい人が糸のようなものを指先から出してくる。

 わたしの肩にくっついたそれを煉先輩はすぐに炎で焼いた。


 糸ってことはクモのあやかしかな?

 土蜘蛛だったらまずいかも。

 たしかかなり強いあやかしだったはず。


「クモの糸じゃあ燃やされますよ。ここは俺が」

 そう言って横の人が腕を振った。


 何?


「っ! 美沙都!」

 何かが出てくるわけでもなくて疑問に思っていると、煉先輩に手を引かれる。

 そのすぐ後にヒュッと空を切るような音が聞こえてスカートの裾が少し切れた。


「っ!」

 風の刃。
 ってことは……かまいたち?


「動くなよ。逃げられない様にちょっと足を傷つけるだけだからさ。あとでちゃんと薬も塗ってやるから」

「だからって大人しく切られてたまるかよ!」

 言うが早いか、煉先輩はわたしを抱え上げて走り出した。

 激しい動きに気持ち悪さが増したけれど、文句も言ってはいられない。


「このっ待て!」

 何とか高校生の囲いを抜けて路地裏から出る。

 それでも彼らを振り切ることは難しくて、()くまでに時間がかかった。
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