クール天狗の溺愛♡事情
「美沙都、行こう!」

「でも、ほっとけないよ!」

 コタちゃんにも腕を引かれて、逃げた方がいいんだろうって分かる。

 でも煉先輩を置いていくことも出来ない。

 だから一緒に逃げようと手を貸そうとしたんだけれど、そのときにはもう囲まれてしまっていた。


「大人しく里を出てくれれば痛い思いしなくて済むんだぜ?」

 リーダーのクモのあやかしがニヤニヤ笑って言う。

 でも言うとおりになんて出来ない。


 この北妖の里に戻って来て、仁菜ちゃんって友達が出来た。

 ご近所さんや、学校で仲良くしてくれている人達。

 おじいちゃんおばあちゃんもいて、実感はまだないけれどもうすぐお父さんにも会える。

 それに――。


 風雅先輩……。

 わたしの片想いかも知れないけれど、大好きな人もいる。


 この里はもうわたしの居場所なんだ。

 出て行けなんて言われてうなずけるわけがない。


 また嫌な感情が流れ込んできたけれど、気持ち悪くなる前にこれだけはハッキリ言っておきたいと思った。

 息を吸って、叫ぶ。


「何を言われても、出て行きません……。ここは、この北妖の里は……わたしの大事な居場所ですから!」

 しっかり立って、睨みつけて宣言する。
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