クール天狗の溺愛♡事情
「良かった……嬉しい」


 その言葉に、その笑顔に、わたしは泣きたくなるほど嬉しくなって……。

 同時に照れくさくて彼の胸に顔を(うず)めた。


 顔は見えなくても、赤い耳は見えてしまうかもしれない。

 でも、傾いてきた太陽が空を赤く染めてきているから、きっと隠してくれる。

 コタちゃんも気を使ってか、いつの間にか制服のポケットに隠れてくれていた。


 だから、きっと気づかれない。

 わたしがこんなにもドキドキしてしていることを。

 ……風雅先輩の鼓動も早くなっていることに、わたしが気づいていることも。


 嬉しくて、恥ずかしくて、照れくさくて……。

 そんな幸せな時間をわたしは風雅先輩の腕の中で噛みしめた。


***

 学校の上空に戻って来たわたしたち。

 眼下に広がる校庭の様子に、わたしは思わず頬を引きつらせた。


 ……よ、妖怪大戦争……。


 まさに、そんな言葉がピッタリな気がする。

 何人ものあやかしの生徒たちが変転や半変転をして争っていた。


 それを止めようとしているのか先生たちも出て来ていて、混戦状態。

 わたしを山の神の娘だと認めたくないあやかしたちは力の強い者が多いのか、多勢に無勢でも戦えているからなおさら終わらないみたい。
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