クール天狗の溺愛♡事情
「落ち着いてちゃんと見ろ。怖いものじゃないから」

「へ?」

 ポンポンと肩を叩かれてそう言われ、膝のあたりまで登ってきていた“それ”を恐る恐る見た。


「キー!」

「……毛玉?」

 真っ白い手のひらサイズの毛玉。

 つぶらな2つの目が可愛らしい。

 何かの動物のようにも見えるけれど、手足があるようには見えないし、口もあるのかどうかよくわからない。

 でも、確かに怖いものじゃなさそう。


「木霊だよ。これもあやかしだけど、精霊に近いタイプなんだ」

「この子もあやかしなんですか……」

 片手に乗せながら感心したところでハッとする。

 そういえばわたし、テンパっていたからって初対面の男の子に抱き着いてっ!?

 思わず顔を上げるとすぐ近くに整った顔がある。


「はわっ! す、すみません!」

 そうして慌てて離れようとすると、今度は池の方に足を踏み外してしまう。

「あ、あわわわ!」

 手を伸ばすけれど掴めるものなんかなくて、びしょぬれになる覚悟を決めて目を閉じる。

 でも、落ちる前に伸ばした手を彼が掴んでくれた。
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