クール天狗の溺愛♡事情
「呼びにくいなら風雅でいいぞ?」

「た、たまたまです。ちゃんと呼べます!」

 そう宣言したのに、また頭をポンポンと叩かれて「いいから」と笑われる。


「俺も美沙都って呼ぶから」

 そこまで言われたら名前で呼ばないわけにはいかなくて、呼んでみた。

「じゃあ……風雅先輩、ですね?」

「ああ、美沙都」

「っ!」

 さっきと同じ笑顔と、名前呼びのダブルコンボは心臓が爆発しそうなほどの衝撃だった。


 バクバクって鳴って、顔が熱くなる。

 赤くなる顔を見られたくなくて顔を下に向けると、頭を撫でて「可愛いな」ってまた言われた。

 でも、その撫で方が何だか犬や猫を撫でているようにも思えて……。


 ……わたし、小動物扱いされてる?

 そう思うと少しだけドキドキが収まった。


 でもそうだよね。

 こんなカッコイイ人がわたしみたいな普通の子を女の子として可愛いって思うわけがないし。

 小動物みたいに可愛がられているっていう方が納得できる。

 そうしてわたしのドキドキも落ち着いたころ、風雅先輩も撫でるのをやめた。


「まあ、とりあえず。そっちに座って話聞かせてくれよ。人間の街ってどんな感じなんだ? 美紗都はどんな風に暮らしてたんだ?」

 よっぽど珍しいのか、興味があるのか。

 風雅先輩はそう言って座れそうな場所を指差す。


 わたしは助けてくれたお礼も兼ねて、聞かれるままに答えていった。
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