クール天狗の溺愛♡事情
三章 負の感情

フィナンシェの笑顔

 とにかく日宮先輩からは逃げ続けよう。

 朝、仁菜ちゃんともう一度相談してそれだけはしっかり決めておいた。


 だから移動教室のときとか、生徒玄関を使うときとかは特に細心の注意をしていたんだけれど……。

 日宮先輩ばかりを気にしてたからかな?

 もう一人気にしておくべき先輩の事を忘れていた。

***

「えっと……あ、いたいた瀬里さん!」

 昼休み、何だか廊下の方が騒がしいなぁと思っていたら教室のドアの方からそう声を掛けられた。


「はい?」

 丁度お弁当を食べ終えて片付けていたわたしは、誰だろうと思ってドアの方へ顔を向けてギョッとする。

 そこには金髪碧眼の、優しそうな雰囲気の山里先輩がいたんだもの。


「え? 山里先輩? わ、わたしを呼んでるの?」

 元々学校の人気者である山里先輩はすでに注目の的。

 その先輩の近くに行くのはそれだけで勇気がいった。


「そうだよ、行かなきゃ美紗都ちゃん!」

 仁菜ちゃんに急かされて、行かないわけにもいかないから居心地の悪い気分で近くに行く。


「えっと……こんにちは、山里先輩。どうしたんですか?」

 聞くと、山里先輩は儚げな笑みをフワリと浮かべて答えた。
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