幼なじみはエリート潜水士
「ハルくん……」
私は両手で口元を隠しながら、小声で彼の名前をつぶやく。
小学生の時、親しげに呼んでいた彼の名前。
私より一歳年下のハルくんは、背も大きくなって幼少の頃とは体つきもちがう。
「奈々ちゃん、さっきからなにブツブツ言ってるの? 新しい呪文か何か?」
ビールで酔いが回ってきたサトちゃん、急に変なことを言い始めた。
あわてる私に、ハルくんが視線を向けてくる。
「……」
無言のまま、首をひねって不思議顔。
そういえば、ハルくんも私のこと、奈々ちゃんって呼んでた。
その言葉に反応したみたいだけど、何かが引っかかってるみたい。
やっぱり名前かな? 小学生の時は村本じゃなかったもんね。
私はここにいるよ、気づいてハルくん……
「あっ、すいません。俺このへんで失礼します」
焼き鳥を食べ、ウーロン茶を飲んだだけで彼は帰ると言い始めた。