幼なじみはエリート潜水士
「は~あ、まったくもう……」
溜息をつきながら、自販機にお金を入れてコーヒーのボタンを押す。
紙コップに注がれるホットコーヒーを、透明なアクリル板ごしに見つめていたとき……
「ご機嫌ななめの奈々ちゃん! あたしにも一杯ごちそうしてよんっ!」
そう言いながら、私の背中にバックハグしてきた女子社員は同期で同じ歳の佐藤さん。
彼女は広いフロア内にある、すぐ隣の部署にいるので、さっき私がされてた課長からのセクハラを見て追いかけてきたらしい。
まあ、そんなのは口実で、上司が不在にしてるから私と一緒に息抜きしようって感じみたい。
「ご機嫌ななめの奈々ちゃんって……背後から抱きつかれたまま、オヤジみたいな冗談って最悪なんですけど……」
「いや~ん、頬を膨らませて怒る奈々ちゃん可愛いよ~っ!」
天然女子に何を言っても無駄みたい。
というか、小柄で細身のスタイルな私は、同姓から抱きつかれたり頭を撫でられたり子供あつかいされることが多い。
「なんか、いい香りがするよんっ! トリートメントの香りかな?」
佐藤さんが私の後頭部に鼻を擦りつけ、犬みたいに臭いをクンクン嗅いでる。