幼なじみはエリート潜水士

 誰も釣りを始めようとする人はいない。

 それどころか、船内に釣り竿すら見あたらなかった。


 クルーザーの後ろに大きな長椅子があるんだけど……。

 スーさんと若手IT社長……を目指してる人が、缶ビール片手に体を密着させて楽しそうに会話をしてる。


 運転席にいた専務も、歩み寄ってきてサトちゃんの横に腰を下ろした。

 肩に腕を回し、親しそうに何か話してる。

 頬を赤く染めたサトちゃんは、なんだか嬉しそう。


「そういうことだったのね……」


 お昼も近くなってきて、飲食しながら会話が盛り上がってる四人。

 私は船酔いしたのか、吐き気がするので何も口にしたくない。

 頭も痛いし、目まいもする。


「もう、最悪よ……」


 早く家に帰りたいけど、ここは海の上。

 船が港に戻るまで、どうすることもできない。


 その時、サトちゃんが声を上げた。



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