幼なじみはエリート潜水士

「じゃあ、船内に閉じ込められたまま沈没してるってこと!」


 胸がぎゅっと締め付けられる。

 心臓の鼓動が早くなって、不安な気持ちが増していく。


「私、ここで死んじゃうの……」


 腰の辺りまで水かさが増してきた。

 体中の痛みと悪寒、頭痛が私を苦しめる。


「課長の言う通り、ゴルフ接待しとけばこんな目にあわなかったはず……」


 後悔しても遅い、状況は最悪だよね。

 何も見えない暗闇で、大型クルーザーと一緒に海の藻クズになるんだ。


 顔を下に向けると、両目から急に涙があふれ出てきた。

 頬を伝ってポロポロ流れ落ちる涙を手の甲で拭う。


 どうしてだろう、助けを求める声も出ないし意識も遠くなってきた。

 上下左右に船体と同じ動きで体を揺すられながら、暗闇で海水の音を耳にする。



 ……その時、私の足下で何かが光ってることに気づいた。



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