幼なじみはエリート潜水士
巻き上げられるワイヤーロープ、私たちの体は水面から離れていく。
ヘリコプターがホバリングしてる上空まで、ゆっくりと持ち上げられる。
「下は見ないで、けっこう高いから!」
「うん……」
あっという間にヘリコプターの側面まで上昇して、中にいた別の隊員に手と体を引かれて二人とも室内に。
「奈々ちゃん、このまま羽田空港に行くから!」
「どうして?」
「そこに、俺たちの基地があって、救急車を待たせてる」
「……ありがとう」
「外傷や打撲だけじゃない、低体温症も危険なんだよ」
ハルくんはそう言って、私の体にアルミシートを巻き付けてくれた……
一生懸命、私のことを捜索してくれた海上保安官のみなさん。
私の腕に嵌る、ダイバーズウオッチと天国にいる父親。
心配そうに私を見つめる、大好きな幼なじみ。
すべての人に感謝をしながら、私は最後の力を振りしぼって声を出した。
「みんな、ありがとう……」
眠るように目を閉じた私は……その後の記憶を無くした……