極上男子短編集
私が問題を説いている時間に清水くんは自分の勉強をしていて、その時はとても静かだ。


2人の息遣いしか聞こえてこない世界。


難しいテキストを前に時折うなり声を上げることもあるけれど、大抵がスラスラと問題を解いている。


「そのテキストはなにをしてるの?」


5分間休憩を挟んだときに聞いてみると、清水くんは少し照れたように頬をそめて「医学の勉強をしてるんだ」と、教えてくれた。


なんでも彼の父親は医者をしているらしく、自分もその道に進みたいと思って勉強しているらしい。


清水くんの大きな夢に頭がクラクラしてきた。


対して私の夢はなんだろう?


これといった目的もなく生きてきたから、パッと思い浮かぶこともなにもない。


好きなことと言えばアニメやマンガだけれど、それについて仕事にしたいと考えたことはなかった。


そんな地に足のついていない私とは違って、清水くんはしっかりとした目標を持っている。


それだけですごいと思うのに、夢を叶えるための努力もちゃんとしている。


それはもう私にとっては髪の領域だった。
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