極上男子短編集
しかし回答欄は空白のままだ。


隣で眠った彼に釘付けになっていたのだから当然のことだった。


「まだできてなくて……」


「人にキスする暇はあったのに?」


意地悪い声でそう聞かれて私の動きは一瞬止まった。


頭の中も真っ白になる。


そして次の瞬間、耳まで体温が急上昇していた。


「な、どうして!?」


「起きてたよ、少し前から」


そう言ってニヤついた笑みをこちらへ向ける。


起きてた!?


両手で顔を覆って恥ずかしさに耐える。


起きてたならどうして言ってくれなかったの!?


心の中でそう非難しても、焦りすぎて言葉には出てこない。


心臓はまた早鐘をうち始めて、全身に汗が吹き出してくる。
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