極上男子短編集
☆☆☆

放課後は私と彼の家庭教師の時間。


彼のおかげで今では授業にもついていくことができている。


彼に感謝しているのに、お礼をしなきゃいけないのに、それなのに私は彼を怒らせてしまった。


もしかしたら、嫌われてしまったかもしれない。


悶々をした気持ちを抱えたまま、放課後図書室のカウンターで仕事をこなす。


休みの日の前日になると本を借りていく生徒たちが増えるけれど、今日は水曜日。


本を借りていく生徒の数も少なくて、ついぼんやりしてしまう。


チラリと視線を向けるのは、いつも一緒に勉强をしていた窓際の席。


いつもは彼が図書室へ来てから勉强が開始されるけれど、今日はまだ来ない。


私はほとんど誰もいない図書室の中を見回して大きくため息を吐き出した。


図書室の中でこんなに強く孤独を感じたことは、初めての経験だった。
< 121 / 190 >

この作品をシェア

pagetop