極上男子短編集
2人は熱心に野球が好きだと顧問に訴えていたけれど、私にはそうは見えなかった。


そんなに野球が好きならどうして1年生の頃からマネージャーをしなかったのかと疑問も残った。


きっと、野球部で人気になった裕太が目的なのだろうと、そのときにすぐに感づいた。


しかし顧問の先生は2人の熱心さにほだされて、マネージャーとして入部されてしまったのだ。


今までは私と先輩マネージャーの2人だけで回してきたのに、突然の珍入者だった。


『彩奈ちゃんにとってはちょっとやりづらくなるかもしれないけど、私ももうすぐ引退だしね』


3年生になった先輩マネージャーは寂しそうな表情でそう言った。


『わかってます』


私はそれだけ言って、すぐにボール磨きに戻ったのをよく覚えている。


さすがに野球部のボール磨きや洗濯を1人でこなすことは難しい。
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