極上男子短編集
「相変わらず1人か」


その声に顔を上げると制服姿の裕太が立っていた。


私は慌てて立ち上がり無意識に髪の毛を手で整えた。


「う、うん。まぁね」


選手にマネージャーじのグチをこぼすこともできなくて、私は曖昧に頷いた。


「じゃあ、俺も手伝ってから帰るわ」


そう言うと裕太は当然のように私の隣にドカッと座り込んだ。


制服のズボンが汚れることなんて少しも気にしていない。


私もまた同じ場所にゆるゆると座り込んだ。


「大変だろ。野球部全員のユニフォームを1人で洗濯するのは」


「そんなことないよ。楽しいよ」


洗濯自体は洗濯機がやってくれるから、私の役目はそれを干しておくことだけだ。


30人以上いるから確かに時間もかかるし大変だけれど、ユニフォームを干しているときの私は幸せな気持ちになれていた。


選手の背番号を見て1年生の〇〇くん、今日は活躍してたなぁとか、2年生の✕✕くんは今日は調子が悪そうだったから、明日も注意して見ておこうとか、そういうことを考える時間が好きだった。
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