極上男子短編集
裕太がいれば、この子たちはどんな部活動でもよかったに違いない。


そう思うと胸の奥がチクリと傷んだ。


裕太は子供の頃からずっと野球が好きだった。


最初は自分の父親がテレビで見ていることで興味を持って、やがて自分でもやってみたいと言い出した。


小学生になった裕太は地元の草野球チームに入り、一生懸命練習していた。


うまく行かずに泣きながら家に帰ってきたことも、何度もある。


練習でキズだらけになっても、1度も休んだことがなかった。


そしてようやく、野球で有名なこの高校にスポーツ推薦で入ることが叶ったのだ。


その連絡を受けたときは私も自分のことのように嬉しかった。


2人して飛び跳ねて、その後は泣いて喜んだんだ。


『絶対に2人で甲子園に行こう』


裕太はこの高校に入学が決まったとき、私にそう言ってくれた。


そして今はその夢に向けて頑張っているところなのだ。


それなのに、この2人はそんな努力も知らないで……!


グッと拳を握りしめる。
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