極上男子短編集
そろそろと視線を向けて見ると、美穂と視線がぶつかった。


その瞬間不敵な笑みを浮かべられて嫌な予感が胸に浮かんでくる。


その間ほんの数十秒だった。


次の瞬間には美穂は前を向き直り、「佐藤沙織さんです」と発言していたのだ。


突然出てきた自分の名前に私はキョトンとしてしまって反応ができなかった。


クラス内も静まりかえり、そして爆発したような笑い声が聞こえてきた。


クラスのあちこちから聞こえてくる笑い声。


それは間違いなく私へ向けられているもので、体がカッと熱くなるのを感じた。


文化祭委員の生徒もとまどった表情を浮かべている。


「本当に?」


委員の生徒が美穂へそう質問する。


本当に私なんかを推薦していいのか?


そういう意味だ。


私はプリンセスにはふさわしくないと、遠回しに言われている気持ちになる。


でも、そんなのは私自身が一番よくわかっていた。


だから自薦することもなく、ただおとなしく時間が過ぎていくのを待っていただけなのに……。
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