極上男子短編集
そんな返事があったかと思うと、笑い声と2人分の足音がどんどん遠ざかっていく。


「ねぇちょっと! 嘘でしょう!?」


叫び声を上げてドアを何度も叩く。


しかし倉庫の外は完全な静寂に包まれてしまった。


冗談でも嘘でもなく、2人は私をここに閉じ込めてそのまま帰ってしまったのだ。


「誰か! 誰かいませんか!」


大声を張り上げても外から返事はない。


倉庫内を見回してみると、手の届かない高い位置に細長い窓があるだけだ。


そこから入り込んでいる太陽の光はすでにオレンジ色になっている。


もうすぐ太陽が沈んであたりは真っ暗になってしまうだろう。


そう考えてゾッとした。


背筋が急速に冷たくなり、焦ってドアを乱暴に叩きつけた。


ガンガンと壊れてしまうんじゃないかと思うほど殴りつけても、ドアは頑丈で凹みすらできなかった。


「そ、そうだ。スマホ!」
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