極上男子短編集
倉庫に閉じ込められたことで混乱して、スマホを持っていることを忘れていた。


すぐにカバンを開けてスマホを取り出そうとしたが、カバンは洗濯機の横においてきてしまったことを思い出した。


制服のポケットの中にあるのはハンカチとティッシュだけだ。


これで完全に外と連絡もとれない状況になってしまった。


スマホをスカートのポケットに入れていなかったことを悔やみながらも、耳をすませば洗濯機が稼働音が聞こえてきた。


そうだ。


洗濯機が動いているということは、まだここに私がいると誰かが気がついてくれるかもしれないってことだ!


いつも私1人で洗濯していることを、顧問や、数人の野球部員たちは知っている。


それに、同じクラスの友人らにグチったこともある。


誰でもいいからここを通りかかって洗濯機が稼働していることに気がついてくれれば、助かるかもしれない!


「誰か助けて! 私はここよ!」


洗濯機の音が聞こえている限り、私は懸命に声を張り上げ続けたのだった。
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