極上男子短編集
はぁとため息を吐き出す。


裕太があれほどカッコよく成長するなんて予想外のことだった。


自分以外の女子からも不動の人気を誇り、こうしてイジメみたいなことに発展するなんて。


そうなってしまうことに気が付かなかった自分も自分だ。


自分が裕太を好きになるということは、他の誰かが裕太を好きになってもおかしくないということなのに。


はぁ。


またため息が出た、そのときだった。


ザッザッとグラウンドの砂を蹴るような音が聞こえてきてハッと息を飲んだ。


誰かがこちらへ向けて歩いてくる。


「だ、誰か!」


声を上げてみたけれど、喉が枯れてしまって出てこない。


何度か咳払いをしてみてもなにもかわらなかった。


その足音は私のいる倉庫に到着する前に立ち止まった。
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