極上男子短編集
彼女たちに奪われてしまわないようにだ。


「勝川くんに聞いたの」


勝川とは裕太の名字だ。


私は瞬たきをして2人を見つめた。


「あんたのことが好きなのかって」


「えっ!?」


さすがに驚いて声をあげていた。


思わずカバンを取り落してしまいそうになり、慌てて抱きしめなおす。


「でも、ただの幼馴染だって言ってた」


そう言う顔には笑みが浮かんでいる。


勝ち誇ったような笑みに、胸がチクリと痛む。


ただの幼馴染……。


そんなのわかっていたことだ。


どんどんカッコよくなっていく裕太に比べて、私は中学時代と何も変わらない。


背も低いし、スタイルもよくないし、化粧をしてみたってきまらない。


そんな自分のことを、裕太が好きになるわけがない。


昨日あんなに必死に探してきてくれたのは、私が幼馴染で、そして私の両親に相談されたからだ。


わかっているはずなのに、胸の痛みはとまらない。
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